『The CITIZEN』メカニカルモデルのCaliber 0200 開発者インタビュー 日瑞協業の新ムーブメント


スイス ラ・ジュー・ペレ社との協業ムーブメントCaliber 0200を搭載したシチズンの新たなる機械式フラグシップ『The CITIZEN』メカニカルモデル、その実機とムーブメントの内容について直接お話を伺う機会が得られました。

 

70年代を思わせるラグレスケースと、(天文台)クロノメーターを思わせる比較的大きめのスモールセコンドを備えたダイヤルを持つデザイン、Cal.0200のレイアウトはスモールセコンド自動巻き専用に最適化された輪列で、スペースをきちんと使い切っていると感じました。

インタビューは半分近くテンワの話をするという「いつもの」感じになったので、まずはテンワから見ていきましょう。

 

クロノメーター(COSC規格)よりも厳しい、6姿勢で-3秒~+5秒/日を基準値として、ケーシング状態で17日・3温度の自社検定による精度保証を行っており、その精度を担うのがこのテンワです。
ムーブメント単体で検定を行うCOSCに対し、ケーシング状態で検査を行い、ケーシング時のストレスによる精度変化を排除しており、調整もテンワ上面から行うことができる偏心マスロット式にすることでケーシング状態のまま微調整も可能です。

 

ムーブメント直径に対して大きくとられたテンワ、スーパーコピーブランドテンワ自体を大きくし、振動数も8振動にすることで、共振における位置エネルギーも運動エネルギーも充分大きくして外乱に強くして精度を担保します。

テンワ自体の外周・スポークともにきちんと面取りがされていますが、「(実は)面取りをしない方が精度は出しやすい」という事から話は始まりました。

テンワはプレスで抜いているそうで、その時点ではバラつきはかなり少なく、そのまま使えば精度は充分出るそうですが、「高級時計」としての美観は充分ではありません。
そのため、サンドブラストで表面を荒らしたうえで、ダイヤバイトによるダイヤカットで面取りし、美観を整えますが、これは逆に精度に必要な慣性モーメントや片重りをズラしてしまう事に繋がります。
この相反する二つの要素を両立するためにシチズンがとった方法は理論に忠実、「教科書通り」の徹底した測定とペアリングでした。

テンワは面取り前・面取り後に専用の測定器を用いて慣性モーメントと片重りを測定し、片重りを補正したうえで慣性モーメントごとの細かいクラスに分け、同じく測定してクラス分けしたヒゲゼンマイと組み合わせることで振動数が規定の8振動になるように設定します。
クラス分けの具体的な数は秘密ですが、「かなり多い」とのこと。
またダイヤカットも均一に行うのではなく、面取り前の測定から結果を予測し、「それを狙う」というノウハウを入れているとのことでした。

テンワの平面部は少し荒らした表現、面取り部分はダイヤカットによる光沢の表現とすることでテンワ内でのコントラストを際立たせて見ごたえのある外観となっています。

この方式により、ひげ持ちと内端の巻き込み角も一定にすることができ、「教科書通り」最適な巻き込み角でヒゲ側を理想的とし、緩急調整は慣性モーメントのみで行うことができます。

この理論に忠実という姿勢はヒゲゼンマイの内端取り付けにも表れており、シチズンとしては初めてのレーザー溶接による取り付けとコレット自体を小径化することにより、内端部をギリギリまで天真に寄せています。
これにより内端を有限長さで打ち切ったことによる誤差、巻き出し位置が姿勢によって変化するグロスマン効果を小さくしています。

マスロットは偏心量が多い租調整用(半月状)と偏心量が少ない微調整用(満月状)が2つずつ4つのスポークに取り付けられており、それぞれをペアで専用治具にて調整を行います。
前述したように、リシャールミル コピーサイドからのアクセスが必須となるチラネジ方式と違い、緩急針と同様に上面からのアクセスで調整できるため、ケーシング後も調整可能です。

マスロットが2つずつペアになっているという特性から、スポークの数は4つになります。
2つでマスロットを集中させるのはどうか?と伺ったところ、2本だとスポークがねじれる方向に弱く、マスロット方式で無ければ3本が理想、今回のはコンサバな4つとのことでした。

テンワ外周に打たれた点は片重り用?と思ったのですが、片重り自体はテンワの裏側を削って調整しており、これは「将来のため」だそうです。
この点は外周に対して12カ所均等角(30度ずつ)に打たれており、将来の微調整や更なる追い込みを行う加工を行うための「ガイド」として働き、例えば中間姿勢を追い込みたい…というときに理論に沿ってテンワを削ることができるそうです。